小学校学習指導要領(昭和33年10月発行)理科

小学校学習指導要領(昭和33年告示)理科 

※<栽培学習>に関する箇所抜粋


第1学年

2内容
(1)校庭や野山の自然に接し、全体的・直感的な観察や遊びなどを通して生物に興味をもち、それらの性状や生活の目だった様子に気づき、生物をかわいがるように導く。
ア 花だんの草花の観察と、世話の手伝いをする。
(イ)あさがおのような粒の大きな種子をまき、種子のまき方を知る。
まいた種子に水を与えて発芽をまち、発芽や育つ様子を見守り、世話の手伝いをして、それを愛育しようとする。
(ウ)春まいた草花の開花について話し合い、花を数えたり、つぼみや葉を観察したりなどして、親しみをもつとともに、その色・形・草たけなどの違いに気づく。

3指導上の留意点
(2)内容の文中「気づく」とあるのは、児童の自発活動によって、実際のものについて観察したり考えたりなどして、みずから納得することをさしている。したがって、教師が話などにより、結果だけを教え込むような指導は避けなければならない。このことは、第2学年以上においても同様である。
(3)内容の文中「知る」とあるのは、児童が観察・実験などを通して学習するのを本態とするけれども、さらに教師が知識として与える面が必要な場合を意味している。したがって、児童にじゅうぶん活動させないで、教師が初めから教えこむことは避け、その知識も、児童が納得できるように程度を考えて、無理のない指導をすることがたいせつである。このことは、第2学年以上においても同様である。


第2学年

2内容
(1)校庭や野山で生物を観察したり、飼育・栽培したりして、四季おりおりの生物に興味と親しみをもち、生物の外形や成長・生育の様子を観察し、また、生物の種類や生活の様子が季節によって違うことに気づくようにするとともに、生物をかわいがるように導く。
ア 草花の世話をし、育ち方に関心をもつ。
(ア)春と秋に、花だんに、作りやすい草花の種子をまいたり、球根を植えたりして、種類によって、まいたり植えたりする時期や方法に違いのあることを知る。
(イ)まいたり植えたりした種子や球根の芽ばえや育ち方が種類によって違うこと、よく育てるためには日がよくあたるようにし、ときどき水をやらなければならないことに気づく。
(ウ)雑草を抜いたり、水を与えたりなどの手入れや世話ができるようになる。
(エ)種子を取ったり、球根を掘ったりして、一つの種子や球根から多くの種子や球根ができることに気づき、翌年のために、それらを保存することができるようになる。


第3学年

2内容
(1)四季を通して生物の様子を観察したり、飼育・栽培したりして、草木の成長、動物の生活の様子、すむ場所などが暑さ寒さに関係があることに気づくようにし、生物をその環境と関連して見る目の初歩を養う。~以下略~

ア 学校園の世話をし、草花や野菜の育ち方・ふやし方を調べる。
(ア)学校園や菜園に、春と秋に、へちま・えんどうなどその時期の種子をまき、続けて世話をするとともに、著しい変化を記録することができる。
(イ)苗の植え換えをし、植物には植え換えるとじょうぶに育つものがあることを知る。
(ウ)あぶらなのようなつくりの見やすい花を観察して、花はがく・はなびら・おしべ・めしべなどからできていることを知る。
(エ)へちまには、実のできる花と実のできない花とあることに気づく。
(オ)へちまの水取りをし、根の吸った水が茎の上方にのぼることを知る。へちまの実の内部を観察し、その筋を利用することを知る。
(カ)草や木で、さし木・株分けを行い、植物には、さし木・株分けでふやすことのできるものがあることを知る。
(キ)球根などの水栽培をし、根や芽が出る様子や、葉・つぼみ・花の様子を観察して、球根の中に養分があることに気づく。
(ク)草花などに霜よけをしたり、それらを簡単なフレームなどに中に入れたりして、草木の中には、冬の寒さを防いでやる必要のあるもののあることを知る。


第4学年

2内容
(1)観察や飼育・栽培によって、個々の生物のつくり・くらし方の著しい特徴やその違いに気づくようにするとともに、生物の一生の変化には一定のきまりがあることを知らせる。~以下略~

ア いもやまめの育ち方やふえ方を調べる。
(ア)じゃがいも、またはさつまいもなどの栽培のしかたを知り、これを栽培して、その生育の様子に気づく。
(イ)植物にはじゃがいものように、いもでふえるもののあることに気づく。
(ウ)秋まきのえんどうなどは、春になると目だった育ち方をすることに気づくとともに、その花や実のつくりを調べる。

カ 生物の冬越しのしかたを調べる。
(ア)冬の野山や校庭などで、植物の地下の茎・いも・根・冬芽などの観察を通して、植物はいろいろな姿で冬を越す事実に気づく。
(イ)(ウ) 省略


第5学年

2内容
(1)観察・実験によって、生物の生活のしかたや育ち方などが生育の場所・食べ物や養分・温度などに関係のあることに気づき、さらに生物と人間の生活との関係を考慮するように導く。~以下略~

ア いねを栽培して、その育ち方を調べ、環境との関係に関心をもつ。
(ア)もみのつくりを調べ、 いねをよく育てるには、充実しているもみを選ぶ必要のあることがわかり、選種のしかたを知る。
(イ)もみをまき、発芽したときの様子を観察し、芽の出方の特徴に気づく。
(ウ)いねの育ち方を観察して、株の分れ方、花の咲く時期、花のつくりや開閉などを知る。
(エ)いね・むぎのほかにも、まつ、とうもろこしなどのように、こん虫のかなだちによらないで受粉するもののあることを知る。
(オ)いねは、ずいむしなどの害虫や病気におかされる場合のあることに気づくとともに、これらの害を防ぐ方法を知る。

イ 種子のつくり・発芽・伸び方を調べる。
(ア)だいずなどの豆を発芽させ、子葉が開きかけたとき、これをつみとると発育がおくれることから、子葉には養分がたくわえられていて、それが芽を出すのに役だつことを知る。
(イ)発芽には適当な水分や温度が必要なことを知る。
(ウ)かき・そらまめのように、つくりの見やすい種子を観察して、種皮・子葉・はい乳などがあることや、それぞれのはたらきを知る。
(エ)種子をはちにまき、明るい所や暗い所で育て、茎の伸び方や色、茎や根の伸びる方向などが、光に関係することに気づく。

ウ 花と虫との関係やそれぞれのつくりを調べる。
(ア)ちょう・はちなどが花のみつを吸い、花粉を集める様子を観察し、ちょうやはちが、その際に、受粉のなかだちをすることを知るとともに、花のつくりと虫のからだのつくりとの関係を理解する。
(イ)花には、かぼちゃのように雄花、雌花の別のあるものもあることを知るとともに、かぼちゃなどで人工受粉したり、受粉をさまたげたりして、花は受粉すると、めしべのもとがふくらみ、実となり、その中に種子ができることを知る。
(ウ)あぶらな・つつじ・たんぽぽなどの花びらの数・形・並び方などを観察して、それらには、それぞれよく似た花があることに気づく。
(エ)省略

3指導上の留意事項
(1)内容(1)のア〔いねの栽培〕は、都会地においても、その栽培規模の大小は問わず、できるだけ内容に示したような経験を得させることが望ましい。このような場合には、見学または視聴覚資料の活用によって、理解を助けたり、深めたりすることができる。

(5)内容の文中「理解する」とあるのは、児童の活動と教師の指導によりじゅうぶん納得し、さらにこうして得られた知識が他の場合にもはたらくようになることをさしている。このことは第6学年においても同様である。


第6学年

2内容
(1)観察・実験によって生物のつくりやはたらきを知り、生物はそれぞれ生命を保つのにつごうよくできている事実や、生物は互いに関係して生活している事実に気づくように導く。~以下略~

ア 植物の根・茎・葉のおもなつくりとはたらきを調べる。
(ア)植物には主根・枝根やひげ根などのあることに気づき、根のはたらきを知る。
(イ)発芽しただいこんなどの根を観察して、根毛のあることに気づき、根のはたらきを知る。
(ウ)赤インクの中にほうせんかなどの茎をさし、その染まった茎を薄く横切りにして、水分の通り道を知る。
(エ)実験によって、植物は葉から水を蒸散している事実に気づき、顕微鏡によって気孔を観察し、そのはたらきを知る。
(オ)葉の表面の薄い皮を顕微鏡で観察し、これがいくつかのくぎりからできていて、その一つ一つが細胞であることを知る。
(カ)実験によって、緑の葉にはでんうんができること、その場合に日光が関係することを知る。