小学校学習指導書 理科編 Ⅰ(実験・観察等の方法)上 昭和28年

小学校学習指導書 理科編 Ⅰ (実験・観察等の方法)上
昭和28年2月発行 


Ⅱ生物の生活
3.作物の育て方 P142

(11)わた
 わたは熱帯地方の原産で高温を好むものであるが、いまでは寒い地域にも栽培されるようになった。日本では、北緯38°まで栽培されている。栽培の最適地は兵庫附近であり、中国・四国地方は昔は盛んに栽培された。水戸は内地における北限とみられる地方である。

a. 種のまき方
 発芽の最適温度は30~40°であるから、地温が15°以上になった5月中旬ごろまくとよい。
 畑はよく耕してうね幅45~60㎝ぐらいにとり、みぞを掘り、1㎡あたりたい肥1kg、だいずかす10g、過りん酸石灰50g、草木灰20gを入れ地ごしらえし、株間25㎝ぐらいにとって種をまき、軽く土をかけておさえる。
 わたの種には、まだたくさんの毛が残っていて、油気も多いから、そのまままいては発芽に時間がかかる。まく前に、まずよく日にかわかしておいたものを30分ぐらい水につけ、水をきってから草木灰をまぜてよくもむと、油気がとれ、種の毛によってくっつきあっていた粒が離れて、まきよくなる。また、種に濃硫酸をかけると毛がなくなり、悪い種は浮くから、それをとりのけ、よい種を水洗いしてまいてもよい。
 水分を吸収させた種を乾燥地にまくと、土中でむれて腐る場合があるから、降雨後の湿った土地にまくのがよい。乾燥がひどいときには、じゅうぶん●水してやる。

b.手入れととり入れのしかた
 種をまいてから1週間か10日もすると芽が出る。30日ぐらいで本葉が3枚ぐらい出そろう。そのころ第1回の間引きをして葉が触れあわないようにする。その後10日ぐらいしたら第2回の間引きをし、弱々しもの、伸びすぎているものを抜き取り、強い苗を残す。さらに、もう1度間引いて定数とする。
 7月下旬から8月にかけて美しい花が咲き結実する。綿がとれるようになるのは、花が咲いてから50日か60日である。8月中に咲いた花でないと綿がとれない。
 7月終りごろになって、成り枝を6~7段残して、下から9節か10節のところでしんをとめる。すると成り枝がよく発育して花がたくさんつく。綿の花はだいたい下から4~5節までのところにはつかない。それから上の各節に成り枝ができて、その枝の節ごとにつぼみがつく。
 開花後60日ぐらいすると実がさけて、わたの毛が見えてくる。このとき熟したものからとり入れる。
 わたの毛から種をとるには、大量の場合は機械を使わなければならないが、少しなら手でも取れる。
 学校園の広くない学校では、はち植えにして栽培するとよい。